京大生を中心としたボランティア団体、こども食堂「からふる」
京都大学の学生を中心に活動するボランティア団体、こども食堂「からふる」。
京都府内のおよそ8カ所の地域で、地元の子どもたちに向けて食事の場を提供したり、学習相談会などのイベントを実施しています。
7/23(日)に、叡山電鉄一乗寺駅近くの「一乗寺公園」にて『遊びの広場!』と称されるレクリエーションと、近隣の「一乗寺こども食堂」にて食事の提供が行われました。
未来ある子どもたちと次代を担う大学生たち、そして地域の活動に貢献される地元の方たちの触れ合いの現場を「きょうエシ!」編集部が取材して来ました。
遊びじゃない、「本気の遊び!」一乗寺公園『遊びの広場!』
「一乗寺こども食堂」開店と同日7/23の午前10時より、一乗寺公園にて地域の子どもたちと大学生が“本気で遊ぶ”『遊びの広場!』が開催されました。
この日の京都は36.6度を記録する猛暑日。炎天下のうだるような暑さの中、開始10分前に会場の一乗寺公園へ。
開始時間前にも関わらず、すでに2、3人の子どもたちとはしゃぐ青年の姿がありました。
地面の砂ぼこり舞う激しいクイックターンを含む「追いかけっこ」。
子どもと一緒に熱中するその姿は一見して親子のようにも見えましたが、その彼こそが、こども食堂「からふる」会長の中土井海斗(なかどいかいと)さん。
ご挨拶の際も「今日はよろしくお願いします!何でも聞いてください!」とハキハキと話される、知的メガネの好青年でした。
『遊びの広場!』スタート
開始時間の10時になり、続々と子どもたちが一乗寺公園に集まります。
集まるやいなや、ひとりの女の子が持参した水風船作りが早々に始まりました。
その間に、みんなで記念写真の一枚をパシャリ。
子どもたちの手によって、大学生の両腕でも抱えきれないほどの水風船が量産されていく・・・。
印象的だったのが、この水風船はひとりの女の子が自発的に持って来てくれたとのことで、学生主導のトップダウンのレクリエーションではなく、子供たちからも自由な発想で“遊びの時間”が作られていることでした。
木陰で冷たい水に触れて、涼しげ。水風船作り自体も楽しい遊びの時間です。
水風船は水を入れた後、ゴムの圧力で水が飛び出してしまうため、子どもたちにとって口を結ぶ作業は大人が想像する以上に大変なようです。
途中で落として破裂させてしまうことも度々あり、結ぶ作業は大学生が代わりにするという共同作業が生まれていました。
途中、子どもたちから「あ、もっちゃんが来たー!」という声が聞こえ、指差す公園入口を見るとそこには凛々しいセンターパートのメガネ男子が。
もっちゃんは他大学から参加されている学生で、子どもたちからとても人気がある方でした。
「からふる」が京大生“中心”としているのは、京大生に限らず同じような想いを抱いている人たちにも交友の輪を広げているためです。
ルール無用の水風船のぶつけ合い。
追いかけられる子どもたちからは、大学生に対する「大人げないぞ、おい!」という叫びが聞こえ、お互いの本気度がうかがえます(笑)
容赦のない子どもたちは集中して会長と、もっちゃんのふたりを狙い撃ち。
彼らも負けじと水鉄砲で反撃を試みるも自転車に乗って逃げられるなど、子どもたちの意外に狡猾な(?)場面も見られて楽しかったです。
水遊びには交わらず、少し離れた場所でサッカーやドッヂボールに夢中になるアスリート志向の子どもたちと、それに応じるかのようにコーチ役に徹する大学生も。
遊びの合間には適宜、給水タイムも設けられました。お子さんをあずかる立場でもあるため、健康状態への配慮も忘れません。
複数のジュースを配合した、謎の“特製ドリンク”を飲まされる会長。
「なんだこれ!」という激マズのリアクションに笑いが起こります。
その後もゴムボールのキャッチボールや追いかけっこなど、無限に体力が続く子どもたちとの遊びの時間は続きました。
誰もが気軽に来られる場所へ。「こども食堂」で食卓を囲む時間
今回の「からふる」の、こども食堂は一乗寺のボランティア団体「一乗寺こども食堂」さんとのコラボレーションで実施されました。
調理や配膳は「一乗寺こども食堂」のボランティアスタッフのみなさんが主体となって行われます。
スタッフさんたちが食事の提供や子どもたちのお世話に集中できるよう、「からふる」のメンバーは受付の手伝いをします。
続々と用意されるおかず。この日は唐揚げや酢豚をメインに、きゅうりの酢の物など小鉢が並びます。
空いた時間に子どもたちが遊べるよう、ボードゲームや絵本がたくさん置かれていました。
配膳の合間にも、子どもたちと会話する地元ボランティアのみなさん。
みなさん慣れたご様子で、子どもたちの過ごし方を見ても、まるで“友達の家に遊びに来た”ような雰囲気。
編集部が子供たちに感想を聞くと、シンプルながら「美味しい!」と答える子どもたちの笑顔に癒されました。
“誰かと一緒にご飯を食べる”。それだけで心が充たされる時間です。
お弁当としてお持ち帰りすることも可能。コロナの自粛期間から始められたとのこと。
お父様がお子さんの分を受け取って持ち帰られる場面も。
この日は、希望者へのお米の持ち帰り分も用意されていました。
時おり、ご近所の農家さんからお米や野菜などの食材の提供があるそうです。
運営側の細かな配慮
食堂には続々と子どもたちが集まってきていましたが、いっぽうでお昼時の公園に目を向けると、まだそこにいる子どもたちのためにテントが張られていました。
小学校から貸与されたテントで暑さ対策を万全に。
そして、はじめて「一乗寺こども食堂」に向かう子には丁寧に食堂の場所まで案内してあげるなど、ただ遊ぶのではなく、適切な管理と運営をされていらっしゃいます。
こども食堂「からふる」メンバーにインタビュー
子どもたちが食事を終えた14時過ぎの「一乗寺こども食堂」。
京大生たちも、ようやく自分たちの食事を取れる時間となりました。
遅めの昼食は子どもたちと同じ献立のお弁当(量は倍ぐらい)。
お食事中でたいへん恐縮ではありましたが、こども食堂「からふる」会長の中土井さんや、メンバーのみなさんは快くインタビューにお応えくださいました。
こども食堂「からふる」インタビュー
「からふる」はみなさんや子どもたちにとって、どんな場所なのでしょうか?
「からふる」は“誰でも来て良い”場所。
敷居が低く、気軽に集まれるのが「からふる」の良いところだと思っています。
確かにお互いによそよそしさは一切なく、自然に触れあっている印象でした。
そして来てくれた子たちが、もし何かに悩んでいたり、困っていることがあれば専門的な機関や人に紹介できる「社会的意義のある場所」でありたいですね。
来てくれたその場所、そのひと時だけ「ひとりにならずに済む」のではなく、その子たちが抱える悩みや問題の根本的解決を援助したい、という想い。
こども食堂はたくさんありますが、「からふる」ならではの特徴はありますか?
企画力があることです!
毎回同じ内容ではなく、運営会議でメンバー同士がアイデアを出し合います。
「遊戯に『フリスビー』を追加しよう!」といったものから、海外の料理をその国出身の人とコラボしてフェアを実施したり。自由な発想で多種多様な企画を考えています。
それは活動理念にも掲げている「メンバーが楽しめる」ということにも通ずるのです。
いっぽうで学業が本業の京大生には、しっかり活動と勉強を両立してほしいですね。
確かに遊戯の後や、食事の合間にも「帰ったら、勉強がんばろう!」とお互いに声かけをされている場面が見られました。
活動は2016年からと長く続いていますね。その秘訣はどこにあるのでしょうか?
純粋に「やりたいから、やっている」という気持ちが継続をさせていると思います。
伏見青少年活動センターで開催している「からふる喫茶」や、他団体とのコラボ合わせて府内8カ所で活動をしているのですが、その規模を維持したいです。
団体自体がそんな気持ちや目標を持ってやる。僕は今年で4年生なので、次の代以降の人たちにも続いてもらいたいですね。
子ども食堂を実施している団体は多くありますが、その目的や意味合いは様々。
地産地消の地元食材を応援するキャンペーンの一角であったり、お祭り的イベントとしてスポットで行われることもありますが、「からふる」は意志を持ったひとつの継続した団体として活動を行われています。
僕が「からふる」に参加し始めた3年前は、メンバーもほんの数名程度でしたが、この3年間で100人を越えました。
そういった継続や拡大のポイントは、気持ちの面に加え、「からふる」の組織体制にもあります。
具体的にはメンバーを「運営メンバー」、「当日メンバー」と区分けしているのです。
運営メンバーは企画会議の実施から当日の参加まで全体に携わる。
当日メンバーはその名のとおり、当日だけ気軽に参加するメンバーです。
それが非常に理に適っていて、無理のない運営が出来ていることも要因です。
他の方にも、お話をお聞きしたいのですが、みなさんがこども食堂で料理を作られる時の様子を教えてください。
伏見青少年活動センターで実施する「からふる喫茶」など自分たちが主体でやる際は、調理や配膳も自分たちで行っています。子供たちも喜んでくれるし、メンバーの料理上手な子の作り方を参考にしたりして、自分たちも学びながら楽しんで作れるのが良いです。
「からふる」に参加されるようになったきっかけは?
自分は高校教師になることを志望しているのですが、高校生の前にまず、小学生とも触れ合ってみようと思って。実際に参加してみると、とても楽しくて、たびたび参加しています。
メンバーそれぞれにとっても、自分のスキルや将来の夢に向けた学びの機会になっているようで、本当に有意義な集まりなのだという印象を抱きました。
最後はまた会長にお伺いします。これから具体的にやっていきたいことはありますか?
いろんな団体や人たちと、たくさんコラボしていきたいです。
最初はこの一乗寺でも5、6人の子どもたちしか集まらなかったんです。
子どもたちの中にインフルエンサー的な立ち位置の子が広めてくれて認知が広がり、子どもたちが集まってくれるようになりました。
そうした経験からも自分たちだけではなく、みんなで繋がり合ってこそ形づくっていける活動だと思います。
「からふる」という団体名は僕らの参加する前にすでに名付けられていましたが、そこには”いろんな人、もの、コト、出会い”といった意味が含まれていると感じていて、これからもその可能性を探っていきたいです。
「からふる」の活動は世の中を変えられると思っています!
迷いなく強い眼差しで断言する会長。
実際に子どもたちと近い距離で触れ合ってきた3年間があるからこそ、その確信に満ちた発言に力強さを感じました。
きょうエシ!編集部後記
真夏日におよそ4時間に及ぶ公園でのレクリエーションの終盤、編集部が暑さにうなだれベンチに座っていた時です。
終わり間近にしてなお、息を弾ませて子供たちと走り回っていた会長も、そんな編集部の姿を見て隣に腰掛けてきました。
思わず「よくそんなにずっと、子どもたちに合わせて走っていられますね!?」と声をかけてみたところ、このような返答。
「こっちも本気出さないと、子ども達がつっ込んでくるんですよ。
『子どもだからって、なめんなよ!』って(笑)」
苦々しく笑いながらも、爽やかに答える姿が印象的でした。
こども食堂「からふる」の団体・活動概要
こども食堂「からふる」
京大生を中心に、こども食堂や学習相談会などのイベントを運営するボランティア団体。
京都府各所にて、週一回のペースで開催。具体的な会場や日時は随時SNSで発信されています。
こども食堂「からふる」オフィシャルページ
https://diningcolorful.wixsite.com/kyoto
こども食堂「からふる」Instagram
https://www.instagram.com/kodomoshokudou_karafuru/
こども食堂「からふる」Twitter
https://twitter.com/dining_colorful